近くにいた王子
だから仕返しにと思って言っただけなのに。
「今から紗雪のとこでも遊び行くかなー」
そう言った途端、陽人に首を掴まれた。
「うがっ」
「光…さゆに指一本でも触れてみろ。どうなるか分かってるよな?」
今までで1番、怖い陽人を見たかもしれない。
俺は何度も何度も頷いた。
すると、陽人は勢いよく俺を放した。
「蓮本。これからさゆに、光近付けないようにして」
「りょーかい」
そう言い残すと、陽人は校門の向こうへと消えて行った。
その瞬間、笑い出すアユ。
「光馬鹿じゃんっ。高橋くんは紗雪のこと大好きなんだから、やられるに決まってんでしょー」
「うるせーなぁ! 俺もう帰るから! じゃーな!」
そう言うと、俺は自転車に跨った。
「あっ、光!」
呼ばれてアユを見ると、
「ありがとね」
そう言って笑っていた。
やっぱり俺、アユが好きだ。