近くにいた王子


「なぁ、陽人」

「ん?」

「お前、いつから紗雪のこと好きだったんだよ?」

「は?」


日曜日。
陽人の家で、俺はずっと疑問に思っていたことを問いかけた。


「なんだよ、いきなり」


陽人は怪訝そうな顔でこっちを見ている。

まぁ、そうだよな。
いきなりこんなこと聞かれてもな。


「いいじゃん、教えてくれよ」

「絶対いや」

「そんなこと言わずに」

「お前に教える理由がない」


いつものことだけど、冷たいよ陽人さん。


「好きとか、付き合うとか、俺にはいまいち分かんねーんだよ」


好き、はなんとなく分かるけど。
いや、分かんないも同然か。

俺は"あいつ"に対する感情しか知らない。


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