涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
それぞれの心を抱えて



葉月夏希side



苦しく、叫ぶように。

怜の気持ちを代弁するようにそう告げた鞠さんは、涙を零していた。


どれだけ会いたかったか?


…そんなの、あたしだって会いたかった。


だけど、鞠さんの代わりだって思われて、違う姿を見ている怜と関わるのが怖かった。



「なにも…なにも!!
鞠さんは知らないじゃないですか!!」


言い出したらきりがないこと。

そんなの分かってる。理解してる。

…だけど。


「っ…、鞠さんと怜が…本気で付き合ってたと思ってた、あたしには…っ、」


あなた、というフィルターをつけられるのが怖かった。

鞠さんという名の記憶の中に、あたしという存在が書き込まれるのが嫌だった。



「怖いもの、…っ、だらけじゃ、ない…です、かっ…!!」







< 165 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop