涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
「美羽。」
「だから…っ、」
一度大きく深呼吸をして、あたしの目をしっかりと見据えた美羽は、もう泣いてなんかいなかった。
「夏希が、幸せを手放すためなら背中なんて押してあげない。
夏希に幸せになるっていうのなら、背中だって、なんだって押すよ。」
せっかく叶った恋。
やっと掴んだ幸せ。
「夏希。お願い。」
まだ、智尋が鞠さんを選ぶと決まったわけじゃない。
怜にもちゃんと話すべきだ。
話して、幼なじみに戻るなり、無関係の他人になるなり、決めるべきだ。
背中を押してくれた怜に、お礼だって言えてない。
「自分の幸せ、掴んで。」
幸せそうに笑っててよ。と言うその美羽の言葉自体があたしの背中を、しっかりと押してくれた。
「…ありがとう。」
美羽。ありがとう。
本当にありがとう。