涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
あの子は俺の
智尋side
正直ちょっと驚いた。
ーー「…鞠さん、とは、どう、なの?」
恋に臆病だった俺たちが、自分の恋のために、向き合う覚悟をしてるという事実に。
夏希のコーヒーの入ったカップを握る手が、小さく震えているのに気付いて、変わってないなあと懐かしみそうになる。
忘れるために付き合っていたあの頃、何度も行ったカフェ。
大事な話をするときはいつも、震える手に気付いて、手を握っていたっけ。
「鞠、とは…」
だけど、今回は。
手を握るべきではない。
夏希が前に進もうと歩き出したのだから。