涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
「…鞠さんのね、香水の匂いがするの。」
「…え?」
「智尋から、周りの女の子たちの香りじゃない、香水の匂いがする。」
悲しげに微笑みながらそう言う夏希は、崩れそうで。
「…だけど、信じてるよ、大丈夫」
大丈夫、と俺に対していってるんじゃなくて、自分に刻み付けるようにそういった。
…周りの女の子、か。
不安げに揺れている夏希の言葉。
鞠の存在よりも、そちらの言葉に反応してしまう自分が憎かった。
「…鞠は駄目で、他の女の子はいいんだ」
こんなの、ただのヤキモチだというのに。