涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
「…ごめん、智尋」
「…え?」
「踏み込まれたくないこと、あるのに、踏み込んでごめん」
ふんわりと笑った夏希の顔は、苦しそうでも、悲しそうでもなかった。
喧嘩になる、と思っていた俺には、予想をしていなかったその返答に、力が抜ける。
「智尋にとって、あの子が大切だったように、あたしにとって、怜が大切。
幼なじみ、だもんね」
あたし焦ってたみたい。と照れたように頬を掻く姿に、偽りなんてどこにもなくて。