涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜
「病室には…鞠、がいるよ。」
ご両親は説明を聞いてる、と小さな声で秋山君はそういった。
10年を越す片思いは、たった数ヶ月で消えてくれるはずもなく、お互いの心に褪せることなく刻まれている。
「…そっか。」
そう呟いて、秋山君の首に手を回し、ギュッと抱きつく。
「…夏希?」
いなくならないで、とは口に出せない。
あたしたちは、利用し合ってるだけだから、そんなこと言えなくて。
「…っ、」
不安、なんだ。
ただでさえ、不安定な関係なあたしたちは、一線を越えてしまったことで、より危うくなってしまった。