手拭い村の奇祭
序章
「宗士(そうし)。ほら、今日もこれ、頼むよ」

「へぇ〜い」

 やれやれ。
 夏休みにばーちゃん家に来たはいいけど、ほんっと山奥。
 コンビニ一つありゃしない。

 まぁ、お陰で宿題ははかどるけどね。

 中学二年の夏休みといえば、入ってすぐでもないし、受験生でもない。
 学校にも慣れ切って、一番楽しいかもしれないね。

 そんなことを思いながら、ぼくはばーちゃんから受け取ったお供えを手に、畑を突っ切って、裏の山に入った。
 細い山道をしばらく行くと、苔むした石段が見えてくる。

 僕は毎日、この上にある祠にお供えを持って行くよう頼まれてるんだ。

 僕が遊びにくると、ばーちゃんはとても助かるという。
 何でも祠のある山は、女人禁制なんだって。

 信じられる?
 今時女人禁制って。

 僕的には、そんなもん今時守られてないよって言うんだけど、ばーちゃんは頑として否定する。
 この村は特殊だから、そんなことは絶対にないって言うんだ。
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