手拭い村の奇祭
 あ〜、わかった。
 ハンカチ落としね。
 って、全然ハンカチ落としじゃねーじゃん!

 あれも一応、落とされた人は『鬼』だけど、それは遊びでの鬼であって、リアル鬼なんか、誰も求めてねーし!
 しかも落とされた人が鬼なんじゃなくて、マジ鬼に追われるって。
 あり得ない〜〜。

「何だよ、ここは。もう帰りたい……」

 項垂れる僕に、佐馬ノ介は、ずい、と刀を差し出した。

 ん?
 これって。

「宗士。お前はこれで、あの鬼を斬るのだ」

「はい?」

「わしは、この刀『鬼切丸』の刀守(かたなもり)だ。この村の奇祭を終わらせるために、あの鬼を追っている」

 佐馬ノ介が、この刀の……刀守?

「宗士。お前にこの刀を託す。これで鬼を斬って、この奇祭を終わらせるのだ」

「無理」

 一切の躊躇いなく即答。
 だってそうじゃん?
 何言ってんの、佐馬ノ介ってば。

 僕は現代に生きる、普通の中学生なの。
 古き良き日本のサムライじゃないんだよ。

 そりゃ刀は格好良いとか思うけどね。
 本物抜いたことなんてないんだ。
< 12 / 30 >

この作品をシェア

pagetop