手拭い村の奇祭
 でも佐馬ノ介は、僕に刀を押し付ける。

「無理でも何でも、生きたければやることだ。そうこうしているうちにも、お前の後ろにも手拭いが落ちようぞ」

 慌てて僕は振り向いた。
 幸い、まだ何もない。

「何で僕なんだよ!」

「お前は出来ると踏んだ」

 きっぱりと言う。
 何を根拠に、そんな傍迷惑な決断をしたんだ。

 そりゃね、僕だって、違うシーンで言われりゃ嬉しいですよ。
 『お前なら出来る』なんて、結構な褒め言葉じゃん。

 でもね、そう思われて、迷惑なこともあるんです。

「とにかく、無理。トイレに行ってくる」

 言いつつ立ち上がり、小屋の戸を開けて外に出た。
 席を立つ口実だけど、一応トイレに行ってみるか。
 どこにあんだ?

 きょろきょろしていると、一人の爺さんが声をかけてくれた。
 え〜と、この時代のトイレは……。
 て、一体何時代なんだよ、ここは。
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