手拭い村の奇祭
「厠はどこですか?」

 とりあえず、佐馬ノ介の格好から想像して、江戸時代と想定してみる。
 といっても僕は、江戸時代ってざっくり知ってる程度で、それがいつからいつまでとか、細かいことまでは知らないけどね。
 歴史は好きだけど、年表的なものは苦手なんだ。
 まぁいい。

「そっちの先に、穴がある。そこにすればええ」

 穴って……。
 引きつつも笑顔で礼を言って去ろうとした僕は、思わず固まった。
 挨拶を返してくれた爺さんの背後に、白い手拭いが落ちてたんだ。

 あ、あれがそうか?
 いやでも、爺さん野菜を洗ってるみたいだし、単に手を拭くだけの手拭いかもしれないだろ?
 これは教えるべきなのか?

 いやいや、ていうか、何で鬼が出てるのに、皆普通に生活してるんだよ。
 怖くないのか?

 もしかして、やっぱロケ?
 ドッキリ?
 そうだよ、あるわけないじゃん。

 僕は笑顔で、その場を去った。

 その辺をぶらぶらして戻ってくると、爺さんのいたところに、大きな血溜まりと、人肉ちっくな物が散らばっていた。
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