手拭い村の奇祭
「ど、どうすればいいんだ……」

「今更何を言っておる。ようやく鬼を斬る機会がやって来たのだぞ」

 佐馬ノ介は、そう言って立ち上がった。
 窓の外を見る。
 僕は慌てて、鬼切丸を引き寄せた。

「も、もう来たのか? ていうか、これ、いつ置かれたんだ。あとどれぐらい、猶予があるんだ?」

「大分前だな。半刻ぐらい前か」

 半刻?
 一刻の半分てことだな?
 いやいやいや、てことは、半分無駄にしちまったってことだろうがっ!!

「言えよ!!」

 半泣きになって、佐馬ノ介に突っかかる。
 そんな僕にも涼しい顔で外を窺う佐馬ノ介の目が鋭くなった。
 それに気付き、僕も思わず動きを止める。

 そうすると、しん、となったお陰で、聞こえてしまったんだ。
 遠くからやって来る、人ならざるものの足音……。

 同時に僕の中で、何かが目覚めた。
 恐怖はあるんだけど、何か、身体の底から突き上げてくるような、熱いもの。
 絶叫マシンの発車前みたいな、スリルを味わうどきどき感。
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