手拭い村の奇祭
 ああ、こういうの、可愛い女の子と遊園地にでも行って味わいたかった、と思いつつ、僕は鬼切丸を構えた。
 一度顔の前で構えると、何故か自然に、鬼切を握った僕の左手は腕を引き気味にして、刀を抱え込むような体制をとった。
 右手も自然に、柄に掛かる。
 そして腰を落として、僕は小屋の入り口を睨んだ。

 不思議だよね。
 刀はおろか、竹刀も持ったことのない僕が、自然に構えをとってるんだよ。

 僕も一応、歴史は好きだったから、自分のとってる構えが、居合抜きの構えだって気付いた。
 といっても、かなり妙な居合の構えだろうけど。

 刀身を巻き込むように左脇に引き寄せて、右手を添える柄は、ほぼ僕の顎の辺りにある。
 少し、佐馬ノ介が目を見張った。

 足音が大きくなってきた。
 僕は鬼切を構えたまま、目を閉じた。

 居合っていうのは、基本的に一撃必殺なんだよね。
 初太刀を躱されたら終わりなんだ。
 だから、僕も初太刀に全てを賭ける。

 そのためには、集中しなければ。
 刀を抜く前に鬼の姿を見ちゃって、恐怖で萎えても駄目なんだ。
 だから、抜くまで目は開けない。
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