手拭い村の奇祭
終章
「新市〜。ほれ、いつまでも祠に篭ってると、宗士みたいに鬼切に連れて行かれるよ」

「はいよ〜。今行くよ」

 みわみわと蝉の声が降り注ぐ山の中。
 ひっそりとある祠から、男の子が駆け出していった。
 男の子は少し先で待っていた彼の父親らしき人と共に、山道を下っていく。

「宗士って、昔にいなくなったっていう子?」

「そう。あの祠にはね、古い言い伝えがあるんだ。この村に伝わるお祭りでね、討たれた鬼を供養する祠なんだけど。お祭りの時期だけ、あそこに白い布が現れたら、鬼が復活した証なんだって。その時期にお供えを持っていく役目を務めていた男の子は、鬼切丸に連れて行かれるというんだよ」

「えっ! じゃあ僕も?」

 男の子はあからさまにビビって、父親に縋り付く。
 が、父親は笑って、男の子の頭を撫でた。

「新市は大丈夫だよ。何でも、連れて行かれるのは、鬼切丸に見込まれた子だけだっていうしね。それにうちは、代々続くような、大層な家じゃない。昔からこの村にいたわけじゃないからね。ただ、この手拭い村にずっと住んでる家系の人は、鬼切丸と何らかの繋がりはあるかもしれないね」

「そっかぁ、良かったぁ〜」

 明るく笑いながら、親子は去って行く。
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