手拭い村の奇祭
第一章
 気付けば僕は、どっかの草むらに仰向けに転がっていた。
 しばらくぼんやりと空を眺めてから身体を起こそうとしたら、あちこち痛んだ。

 お陰でぼぅっとしてた頭が覚醒したよ。
 ゆっくりと起き上がってから、僕は辺りを見渡してみた。

 何もなかったんだ。
 だだっ広い広場みたいなところでさ。

 何となく、どっかから落ちたんだ、と思ってたんだけど、側に崖があるわけでもない。
 普通に考えればさ、濡れ縁が抜けて崖から落ちたと思うよね?

 でもさ、あそこの崖、結構な高さなんだ。
 落ちたらまず助からないよ。

 それに、落ちたんなら、少なくとも崖があるはずだろ?
 確かに似たような、といえばそんな感じの、山の中には変わりないけど、僕の周りにそんな崖はない。

 ちょっと不安になって、歩き出そうとした僕は、不意に誰かがいるのを感じた。
 恐る恐る振り向くと、そこにいたのは時代劇の役者だったのさ。

 いや、んなわけないよ。
 山の中だよ?
 何の撮影だよ。
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