【彼女のヒミツ】
玲の言葉に礼二は、良い人か…恋への発展は見込めないのかなと、言い知れぬ寂寥感をもたらせた。

「ねぇ、明日から学校始まるけど、またこのメンバーで遊びにいったりしない?さっき仲間くんも言ってたけど、私もこの夏休みすっごく楽しかった。これからもみんなで仲良くしない?」

玲は突然脈絡のない話を切り出した。礼二の暗い顔を見て気遣ってくれたのだと礼二は思った。

玲は、彼女はとても愛らしい女性だ。礼二は笑顔で話す玲の少し日焼けした細腕を見ながら考えた。

彼女は女子高に通う十七歳。おしとやかな第一印象とは違い、よく喋りよく笑い、とても表情豊かな女性で、良い意味で予想を裏切るような第二印象だった。

父親は運送会社で働き、母親は呉服屋でアルバイトをしている。兄弟は一人もいない。父方のお婆さんも同居してるらしく、家事全般を任されているようだ。玲の料理はお婆さんから受け継いでいるという。

現在一家四人で団地へ住んでいるが、最近分譲マンションを購入する予定なので楽しみにしているということだ。

これが現在礼二の知り得る玲の情報だった。

「俺たち、この図書館で出会ったわけだし、ここを拠点にしないかい?」

中尾が玲の意志に賛同を示し提案した。この意見に反対する者はいなかった。彼らは共に意見を出し合い、二学期が始まった後の自身の都合を言い合った。

その結果、毎週水曜日、学校が終われば図書館に集合するという形で全員納得した。

この時、全員が自宅の電話番号を交換し合った。時代は携帯電話が飛躍的に普及し始めていたが、この四人はまだ誰も持っていなかった。

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