【彼女のヒミツ】
17

二学期が始まり、二日後に学年テストが行なわれた。

その三日後、答案用紙を配られる前、仲間礼二の高校ではテストごとに点数上位五十名が、職員室前の掲示板に貼り出され公開されることになっている。

礼二は掲示板に一瞥くれると教室へ向かった。彼の席は中央の列の一番窓際だ。

「お前、夏休み相当勉強したの?」

礼二が席につくと、小野が訊いてきた。彼は礼二の順位の高さに驚きを隠せないようだ。

「塾入れて一日七時間くらいだよ」礼二はすぐさま答える。

「そっか、めちゃめちゃ勉強してるわけじゃないのか。やっぱ河原川塾通ってると学習能力上がるんだな」
小野はそういうと窓外のグランドを見つめ、ぽつりと呟いた。

「俺も河原川行こっかなー」

すると教室の後方から大声がした。

「ハローれいじく~~ん」

いうまでもなく、中尾真也である。礼二は途端に顔を歪めた。

「仲間、お前夏休み終わってから、中尾と仲良くね?」小野は小声で訊いた。

「ん?…う、ん、まぁ」礼二の声は少しうわずっていた。

「やっほーおのっち」中尾は小野の肩を、ぽんと叩く。

「お、おう」小野は訝しい目で中尾を見た。

「じゃ、じゃあな、仲間」そういうと小野は、礼二にも疑わしい目を向けた後、その場を去った。

礼二は横目で小野を見ると、彼は中尾に触られた肩を手で払っていた。

「れいじくん、学年で二番じゃん。すげーちゅうの」中尾は人目を気にせず、教室内で大きい声を出す。

礼二は無言で彼に視線を投げた。

中尾、お前は学校で はぐれ狼なんだ、もっと自分の身分を知れよ、お前に話し掛けられると、俺も周りから白い目で見られるだろうが。彼は胸の内で中尾を罵った。

「まっ、俺も本気出せばれいじくんを追い抜かす点数たたき出しちゃうけどね」

中尾の冗談めいた言葉は礼二の胸にふつふつと怒りを込み上げさせた。

「中尾。俺はエリートなんだ。わかるか?君とは身分が全然違うんだよ。だからあまり気安く話しかけないでほしいんだよ」礼二は冷酷な視線を含ませ彼にいった。

「おほっ、夏休み前のれいじくんに戻っちゃったね。仲良くなったのになぁ」中尾がくすっと笑う。

その彼の笑みが、さらに礼二を毒づかせた。


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