【彼女のヒミツ】
友達から付き合うという濁して交際を始める場合もあるが、それは好意を持った相手に向けられるもので、お目にかからなければ大抵撃沈する。

かず美の容貌を奇麗か不細工で分別すれば、おおよその人間が後者を掲げるだろう。

中尾の通う学校では化粧や髪を染めるのは禁止されているので、化粧で変容することもできない。

だがかず美はこれまで色んな男と付き合ってきたのを中尾は知っている。

訊いてもいない過去の恋愛談を、彼は何度も聞かされているからだ。

かず美の恋愛的な手法としては、いかに自分は傷つかず異性を落とすかに集約されているのだろう。

事実彼女は様々な異性にアプローチという餌を撒き、喰いついた男と手当たり次第付き合っている。

相手が好きなら私も好き。かず美の持論だと予想する。

理想の男性像はうず高いが、理想と現実の区別はちゃんとついており、醜い男でも平気で付き合うのだ。

かず美は付き合った人数=イイ女という間違った解釈をしていた。

中尾は一度かず美の強引な誘いで、休日に遊びに行ったことがあるが、これよみよがしに化粧や流行のファッションに身を包む彼女を覚えている。

「森永って今日暇っしょ。あたしが遊んであげようか?」

かず美が里子に誘いを持ち掛けたが、里子は今日は用事があるから、ぼそっと答えた。

「なになになに?ひょっとして中尾とデートとか?」

うつむいた里子の顔を覗き込むようにして、かず美が話し掛けた。

今日は中央図書館に集まる水曜日だしな、と考えた中尾が「大事な集りがあるんだっちゅうわけだ」と里子の代わりに答えた。

それを聞いたかず美は中尾に向け、あっそ、とだけ言うと話題を変えた。

中尾を敢えて無視するような格好をとり、森永に一方的に喋りまくっていた。

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