【彼女のヒミツ】
20

五時限目の体育が終わり仲間礼二と進藤、福沢の三人は更衣室で着替えを済ませ、並んで教室へ戻っていた。

廊下の後ろから陽気に話す女の声が聞こえた。

礼二は何気なく振り返ると、彼はわずかに目を大きく開けた。周囲にわからないわずかな驚きを見せた。

声の主は沼田かず美。中尾の例の事件の首謀者ともくされる女。彼女はクラスのムードメーカーのような存在だ。礼二にはただのうるさい女としか認識していない。

声をかけられれば普通に会話はするが、礼二から話し掛けるようなことはない。

沼田かず美という女は、やたら口を大きく開けて笑う粗雑な印象を抱いている。

礼二が驚いたのは、かず美の隣りにいる人物だ。

森永里子。

かず美とのツーショットは相当違和感があり、まるで水と油が無理して溶け合おうとしているようにとも感じ取れた。

かず美が里子に一方的に喋っているように見えるが、実際そうだろうと彼は思った。

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