【彼女のヒミツ】
水谷 玲と森永里子が出会ったのは、小学三年生の時だった。

クラス替えで同じクラスになったのだ。

玲が引っ込み思案な性格で、陰を潜めたようなおっとり感を持っていたため、クラスメイトから疎外されていた。

反して里子は明るい性格で気立ても良く、フランス人形のような顔立ちだった。

男女問わず人気者だった記憶が玲にはあった。

玲が嫌がらせを受けると、里子が助けてくれた覚えがある。

辛辣ないじめに遭わなかったり、自殺などを考えなかった理由の一つに、彼女の存在があった。

しかし玲は里子とあまり仲良くしようとは思わなかった。

自分と親交が深まると、里子にもいじめが飛び火するのではないか、というのを恐れたからである。

その三年後、六年生になった頃だった。

修学旅行のグループ決めの時である。

玲はどのグループにも入れてもらえず、半べそをかいていた。

その時、里子が「私達んとこに入りなよ」と声をかけてくれたのだ。

しかし、里子のグループ内では批判の声が上がった。

すると里子は、じゃあ私グループ抜けるねと、今まで仲良くしていた内輪を脱退し、玲の元にきたのだ。

玲はあの時のことを想うと、未だ胸の奥に熱いものがよみがえってくる。

中学生になり、更に親密度は上がった。

互いに絵が好きというのもあり、美術部に入部した。玲はその時、里子の絵画力を見せられた。

里子の人柄がにじみ出るような優しい筆づかい。

抜群な色彩感覚。美術部の顧問には将来を期待され、先輩には羨まれるという現象が起こった。

玲はそんな里子と友人でいるのが誇らしかった。

里子の可憐な体躯と、幼くも整ったアイドル顔。

更に勉強もできるという才女だったので、彼女に恋心を抱く男子も少なくなかった。

里子はまさに玲の憧れだった。




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