無口な同期とイチャラブ♡オフィス
ちゃんと言えば良かった。最初に誘われたときに変に躊躇しないで、愚痴でもいいからライン送っとけば良かった。後悔したって遅いけどさ。
堪えきれなくなった涙が俯いた顔のラインをなぞって落ちて行ったとき。
「もういい」
顔を上げない私に、黙ってしまった私に、業を煮やした優吾がクルリと背中を向けて行ってしまった。
「……優吾!」
慌てて呼びかけて顔を上げたものの、優吾はテーブルへ戻るとジョージに飲み代だけ渡して
「ごめん、帰る」
そんな6文字を残して店から出て行ってしまった。
「優吾ぉ!待って!」
私も焦ってそれを追いかけようとして、一旦テーブルへ戻る。
「柴木ちゃん、ジョージ、ゴメンね!私、優吾追い掛けるから行くね!」
私たちの様子に驚いている柴木ちゃんに飲み代を手渡……そうとして
「ああっ、こんな時に!」
お財布に万札しか入ってない事に気が付いた。私の財布の中、10003円。
えーいもう、これ出しちゃったらお財布空っぽになっちゃうけど、いいや!両替してる時間ないし、定期さえ持ってれば帰れるし!
「ごめん、これで払っといて!お釣りは明日ちょうだい!」
私は柴木ちゃんの手に一万円札を渡すと、自分のカバンを掴んで駆け足で店から飛び出して行った。