桜の約束
約束の、この桜の木から俺の家は少し遠い。
歩いて30分ぐらい。
そして、俺と十夜の家も遠い。
十夜と亜美、それから桜はこの木の近くに家がある。
「…で、十夜。なんでついてくるんだ?」
歩き始めて10分ちょい。
普段なら、もうすでに別れているはずの十夜が掴めない笑顔を仮面のように貼り付けて、俺の横に並ぶでもなく後ろをついてきていた。
「え?いやぁ、亜美が帰っちゃったからねぇ。オレは暇なわけだ。
ということで、守の部屋にお邪魔しようと思うんだけど」
なんでも無いことのように言って、にこにこふわふわと笑う。
「あぁ。そう」
聞いた俺がバカだった、とげんなりしながら十夜のマイペースさに痛む眉間をぐりぐりとこねた。
「ついて行ってもいいんだ?」
意外そうにそう言われて、そこを拒否するのを忘れていたと今更ながらに気付いた。
でも、拒否するための理由として、用事と言いたいが生憎今日は急ぎの用がない。
軽くため息を吐いてから、十夜が家に来るのを許可した。