桜の約束




あたしは今口を開いたら守を傷つけることしか言えない気がするから、口を固く引き結んで傍観に徹する。



「うーん…窓から見えるここ、桜の木を見てたよ。それぐらいかな。ねぇ、守。会いに行ってあげないの?」



……え。


え⁇



のっけから、なんかおかしな方向性。



「早く会いに行ってあげなよ。守、まだあの日の一回しかあってないよね?」



待って待って待って。



それ、桜のお母さんが言ってたことを今からしようって言うの?



今度でいいって言ってたでしょ⁉︎



しかも、無理やり連れて行くの?



え、無茶じゃないの。



「ねぇ、守。怖いんでしょ?逃げてるんでしょ?だから、会いに行かないんでしょ?」



畳み掛けるようにして繋げる。


いやいやいや、畳み掛けてどうするの!



待って!え?



十夜は、なにを言ってる⁉︎



ひんやりとした雰囲気を醸し出して、空回り始めてる。




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