桜の約束
「今はまだ、もう少し待ってくれ。十夜。いつか必ず、俺が向き合うことだと納得して、ちゃんと桜には会いに行くから」
絞り出すような声で、ゆっくりと守はそう言う。
今はまだ、待って。
事故からかなり経ってもきっと、守にとっては衝撃的な出来事で、昨日のことのように思い出せるのだろう。
ちゃんと守が向き合わなければならないことだけど、十夜にこう言われて向き合う、ではいけないと思うから、時間を置くのはいいことだと思った。
「うん、それならいんだよ」
十夜も納得したようで、頷いている。
結局、十夜はなにがしたかったのだろう。
よくわからない。
「さてと、じゃあこの話は終わりだね。亜美。そんなに睨まないでくれよ。可愛い顔が台無しだ」
白々しい。
いらっと来てしまって、頬をつついてくる十夜の手を払った。
「十夜、嫌い」
思ったよりもぺしんと言ってしまって、手の甲が痛い。
すぐに治るだろうけど。