桜の約束
家まで歩く。
その間、まったく会話がない。
まぁ、何時ものことだけど。
「…………十夜。なんか話せよ」
気まずく感じて、何気なく話題を振った。
「え〜?オレが?うーん…」
腕を組んで、真剣に考え出す。
真面目に考えているのかそうでもないのかよくわからない顔だが。
「あ、じゃあオレの名前の由来でも話そうか」
「え。すげぇ…どうでもいい」
思わず出た本音に、十夜が苦笑した。
「うん、知ってる」
「だよな」
肩を震わせて笑いながらも、十夜が話し始めた。
聞いてても聞いてなくてもどっちでもいいのか、俺の方は見ていない。
「えっとねぇ…なんだったかなぁ」
話すといっておきながら、本題はなかなか入らない。
「あぁ、そうだ。思い出した。
たしかねぇ、十の夜も越えて君だけを思う…的な、母さんの父さんへの告白だったわ」
「…は?」