桜の約束
ため息を一つ盛大に吐いた。
そのままメール送信のボタンをタッチした。
このままぐでぐで悩むのは時間の無駄。
それよりも、しなくちゃならないことが…いや今は特にないなぁ。
コンコン…
びくっ!
誰もいないはずの家で、オレの部屋がノックされた。
どこのホラー映画だよ。
と思いつつ、「は、はーい」とためらいがちに返事をしてみた。
「ただいま。十夜」
そこに立っていたのは、普通に母さんだった。
「あー、おかえり母さん」
「何よその返事」
身内のオレが言うのもなんだけど、母さんは美人。
ただの美人じゃなく、冷たい系だ。
で、オレはよく似てるって言われる。
冷たい笑みが冷ややかに突き刺さって。
「今日は早かったんだ。母さん」
「そ。今日は早く終わったの。
久々に息子の顔をじっくりねっとり見つめようかと思って」
なんだそれは。
「…オレもう寝るよ?」
本当はまだ起きてるんだけど、子供の頃からロクに一緒にいなかったから、母さんや父さんといるのは息が詰まる。