桜の約束




聞いたことが、嘘かと思った。



聞き間違いかと考えた。



でも、何度思い返しても。


桜が言った言葉は、一つしかわからなかった。



「俺が…好き?」



いやいや、なんでだ。



好きになる要素ないだろ。



まさかあれか。


「記憶、戻ったのか?」



「…ううん。違うよ」



「じゃあ…なんで」



たちの悪い嫌がらせか。


そんな風にしか、思えない自分がいた。



素直に喜べない。


何故だ。



『私 の こ と
. ま っ て い て』




唐突に、蘇る。



記憶の中の桜の顔と声。



俺が好きなのは今も昔も…1人。



桜…?



あれ。


俺が好きなのは。





誰 だ っ け ?



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