桜の約束
「桜…ほんとに、ごめんな」
「え?」
桜の下、桜と分かれて帰ることはせず、2人でまだそこにいた。
「要らないって言われてたけど…
俺が先に言い出したことだけど…
俺は、記憶のある桜もない桜も好きだけど…やっぱり、記憶のある桜を待つよ」
ただ、俺の愛した君だけを。
最初の約束通りに。
『 あ な た は 私 を 』
『 待 っ て い て く れ る で し ょ う ? 』
目をつぶれば、何度だって。
頭の中で繰り返す。
交わした約束は、俺1人になっても変わらないんだ。
ただ、君だけを待つと。
決めたことに変わりなんてないんだ。
張り裂けそうな想いを口に出してしまいたい。
記憶のない君だっていいんだ。
何度だって君を愛そう。
でも、交わした約束をなかったことにはできない。
俺が待っているのは、俺が待っていると信じている、桜だけだから。