桜の約束

携帯越しの声




「えっとね、…えー…誰だったっけ?
心優、見たのよ。誰か忘れたけど、電話が来てたの」



心優が顎に手を当て、うーんうーんと考える。



「へ?電話?」



まぁ、俺は友達がいないわけじゃない。



だから、携帯が鳴ることぐらいある。



だが…


「電話、かぁ…」



携帯を買い換える前から、電話が来るのは特定の一人からだけだった。



他は、家族から。


でも、家族からなら心優が名前を覚えているはずだ。いや、名前じゃなく『母さん』『父さん』だけど。


ついでに言うと、心優はまだ携帯を持っていない。



「まもにぃ、とりあえず早く受け取って。それから、お客さんをずっと玄関にいさせちゃダメでしょ!
お母さんに、お茶とお菓子頼んどいたげるから、早く部屋行ってよね」



ぷくりと頬を膨らませて、玄関から見える階段を指差す。



俺の部屋は2階なので、早く上に上がれってことだろう。



押し付けられるようにして携帯を渡され、落とさないように慌てて掴んだ。



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