桜の約束




「どういう意味?」



十夜が、笑顔は崩さずに真剣な表情をして…笑顔で真剣ってどんな表情なの…。



まぁとにかく、そんな表情筋の無駄遣いみたいな表情をして、私に問いかけてくる。



「私、守が好き。

だけど、好きになった理由はないし、元々好きだったとしか思えない。


これは、誰の感情なの?

私?

それとも、記憶のある、私?」



「どっちも、君だよ。

どちらも、桜だ」



ううん。


違うのよ。



「違うの。

だって、守に言われたもの。


俺が好きなのは桜であって桜で無いって」



「守が?」



不機嫌そうに、十夜が片眉を上げた。



「うん、そう」



「俺が待っているのは、記憶のある桜だって」



「…ふーん…守が、ねぇ。

多分、守は混乱してるんだよ。多分、ね。守はすごく真面目だから。

今の桜と、記憶のある桜を、別として考えようとしてるんだよ」



< 182 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop