桜の約束
一生に一度の嘘をつく
「守はね、きっと不器用なんだよ」
「不器用?」
「うん」
「どうして?」
確かに、混乱はしてたけど、器用に私と記憶のある桜を分けて見てたような気がする。
…あぁ、そんなことはないのか。
私に、好きな桜の面影を見ていた。
「不器用だよ。
こう、と思ったらこう。
だから、桜が入院してる間、そんな早くに記憶が戻るはずも、入院してる病院から桜が抜けてくるはずもないのに、桜の木の下にずっといたんだよ。
少しでも考えればわかることなのに、1日でもその場から離れたら桜との約束を破ってしまうって、守なりに必死だったんだよ」
守なりに…?
不器用な、あなたの優しさ。
私は、まだ思い出せない。
でも、そんな優しさが。
嬉しくて、悲しいよ…。