桜の約束



「…過去の記憶を取り戻すために協力する。そのくせに、何言ってんだって話なんだけどさ」



大丈夫ですか?の、答えではない。



『は、はい…?』



「淡井が嫌じゃなければ。
_____俺と、初めましてから始めませんか」



気がつけば、そう口走っていた。



何を思い、何故そんなことを言ったのか。



つい数秒前の自分がわからない。



だけど多分。



「もしかしたら、記憶は戻らないかもしれない。
だから、記憶が戻っても戻らなくても。君のことを、想うために。初めましてから、始めさせてください」






多分、記憶が戻らなかった時にも。


桜の横にいるための、


自分なりの口実。




はは。



今この瞬間まで気にしなかった、目の前の十夜の存在。


それが、不意に気になる。



十夜は、泣きそうな。

嬉しそうな。



そんな顔で、笑っていた。




< 28 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop