桜の約束
「…過去の記憶を取り戻すために協力する。そのくせに、何言ってんだって話なんだけどさ」
大丈夫ですか?の、答えではない。
『は、はい…?』
「淡井が嫌じゃなければ。
_____俺と、初めましてから始めませんか」
気がつけば、そう口走っていた。
何を思い、何故そんなことを言ったのか。
つい数秒前の自分がわからない。
だけど多分。
「もしかしたら、記憶は戻らないかもしれない。
だから、記憶が戻っても戻らなくても。君のことを、想うために。初めましてから、始めさせてください」
多分、記憶が戻らなかった時にも。
桜の横にいるための、
自分なりの口実。
はは。
今この瞬間まで気にしなかった、目の前の十夜の存在。
それが、不意に気になる。
十夜は、泣きそうな。
嬉しそうな。
そんな顔で、笑っていた。