桜の約束



携帯を切って、ニコニコと笑う。



「…ねぇ、守」



「ん?なんだ?」



「その顔、気持ち悪いよ?」



「あぁ、ありが…は?」



危ない危ない。



桜と久しぶりに電話したからと言って、十夜の言っていることを理解できないほどに浮かれていてはいけない。



危うく、気持ち悪いと言われたのに礼を言うところだった。



「まもにぃ!」



突然、幼い声が扉越しに聞こえる。



「ん?」



「早くここ開けて!」



心優が、少し焦ったように声を上げる。



慌てて、扉を開けてやる。



扉の向こうには、両手でジュースの乗った盆を支える心優が立っていた。



なるほど、これでは扉が開けられないわけだ。



「これ、お母さんから」



「あぁ、さんきゅ」



渡したら、すぐに去って行く。



小さな背中を見送りながら、扉を閉めた。



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