桜の約束



俺と交わした約束も、その事故で忘れた。



「桜の様子は?」



「ん?…あぁ、桜の様子ね」



俺よりも先に桜と出会っていた十夜と、桜と幼馴染である亜美は、桜に全てを忘れられていないから、時折様子を見に行く。


今日も、その日だった。



だから3時間ほど前、俺が桜の木の下にいる時に、桜に会いに行く二人にあったのだ。



「うーん…窓から見えるここ、桜の木を見てたよ。それぐらいかな。ねぇ、守。会いに行ってあげないの?」



十夜が、いたずらめいた表情で俺を見た。



「早く会いに行ってあげなよ。守、まだあの日の一回しかあってないよね?」



少しずつ、十夜の温度が冷えて行く。



ほわっとした笑顔のまま、目だけが冷たく温度を失う。



「ねぇ、守。怖いんでしょ?逃げてるんでしょ?だから、会いに行かないんでしょ?」



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