桜の約束
時折、十夜は冷たくなる。
俺が答えられないことを、結論が出せないことを知って、それを問い詰めて来るんだ。
俺が目を背けたいことを、言葉で追い詰めてそれしか考えられないようにする。
意地悪じゃないって知ってるさ。
俺が考えなきゃならないこと。
それを考えさせるために、わざわざ憎まれ役を買う。
「ねぇ、守。桜に覚えててもらえないって、改めて知るのが怖いんでしょ?
守って、怖がりの弱虫だよね」
十夜の言葉が正確すぎて、何も言えないんだ。俺は。
「ちょ、十夜!やめてよ!」
間に割り込んで、俺を守るようにして言ったのは亜美だった。
亜美の、女の子らしい華奢な背中が俺に向けられ、キッと十夜のほうを向く。