桜の約束



表紙をそっと撫でて、適当なページを開く。



日にちも何も書かれていない。



私が一言しか書かないのは、面倒臭がりだから。



三日坊主にならないよう、考えたのが一言日記。



本当に一言で、記憶を失った今はもっと書けばよかったと後悔してる。





でも、失った記憶の欠片はここにあった。



でも…ほんの少し、思う。



私の担当医である先生は、日常生活や学校生活に不便があるかは分からないと言っていた。



生活上の不便は、全くなかった。



同じクラスには亜美がいて、友達には困らなかったし、中学で習ったことは知識として知っていた。



だから、思う。

私が記憶を取り戻すことに、意味はあるの?



疑問に思いながら、開いたページの文字を読む。



まるで他人の日記を開いているような、違和感。



客観的にしか見ることができない。



だから、その違和感をそのままに物語を読むような気持ちで読む。



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