桜の約束
考えても、わからなかった。
当然だよね。
私はあの人じゃ無いから。
日記を、閉じた。
視線を桜の木に向ける。
桜の木の下で、野上くんは変わらずそこにいた。
なんでか分からないのに、悲しくなった。
いつまで、そこにいるの。
彼は、雨の日もいる。
何をしているの。
何も覚えていない、何の関係も無い私にはそれを聞くことができない。
そんな権利は無い様に思った。
日記の中の、野上くんと付き合っている私なら。
彼がそこにいる理由はわかっただろうか。
一言しか書かれていない私の日記は不完全で、感情が多かった。
‘‘桜の木”
‘‘約束”
ふと、そんな言葉が頭をよぎった。
なんでなのかわからない。
けれど、私の記憶にとても関わりのある言葉に思えた。