桜の約束
「桜…」
「え?」
弾かれた様に、顔を窓からそらして部屋を見た。
そこには、当然とばかりに十夜と亜美がいた。
「遊びに来たよ〜」
亜美が私に近づいて、ニコニコとした笑顔を見せる。
「ん?…あー、守を見てたの?」
私のさっきまで見ていた方を見て、亜美が苦笑した。
「…うん」
「やっぱり、記憶がなくても守を追うんだね。あんた、守大好きだもんね」
からかう様に笑われて、少し恥ずかしい。
私は…。
「私は、そんなに野上くんのことが好きだったの?」
正直、恋愛感情なんてわからなかった。
「そりゃー、だいっ好きだったよ。
あー…でも、そういうのはあたしたちに聞くんじゃなくて、思い出しなさいね」
危機として語ろうとしていた亜美は、言葉を止めて私を諭す様にそういった。
私が思い出す。
それができれば、そうしたいのに。
私は、曖昧に笑うだけだった。