桜の約束
「…あ、ねぇ。二人とも」
ふと思い立って、二人に聞いてみることにした。
「ん?」
「野上くんは、どうして桜の木の下にいるの?何をしているの」
「…桜、オレはねぇ。教えて上げてもいいと思うんだけどねぇ。
でもね、桜。守を想うなら、思い出す方がいいと思うよ」
優しげな笑みを浮かべ、優しい口調でそう言う。
口調も顔も優しいくせに、なんで言ってることは優しく無いの。
「だね。あたしも、そう思う」
亜美までそう言う。
「思い出せって言うけど…私だって思い出したいけど…思い出せないんだもの」
思わず、そんな弱音が出る。
「それに、思い出す必要がない」
亜美と十夜が口を開くよりも早く。
告げる。
「私…中学入学から、2年生の秋までの約2年間の記憶…消えたんなら、必要じゃ無いものだと思うの」
それに、知識はちゃんとある。
生活は困らない。
「思い出したい…と本当に思ってるかわからない」