桜の約束
あまり使わないから、慣れない動作で携帯を使う。
履歴を開いて、私はびっくりした。
「…野上くん…ばっかり…?」
履歴を埋め尽くす様な『守』の文字。
「記憶を取り戻すこと、少しでも努力しようと思うならやっぱり守だよねぇ。
知りたい答えがきっとある」
相変わらず、確実な答えは教えてくれない。
けれど、今はヒントだけでも十分な気がした。
「…うん…わかった」
「電話してあげたら、きっと守喜ぶよ」
亜美は、ほんの少しだけ寂しそうにそういった。
「じゃ、そろそろ帰ろうかなぁ」
「え?もう帰っちゃうの?」
残念に思ってそう言う。
十夜は柔らかく笑って頷く。
「また来るよ」
「また来るねっ!」
ばいばいと手を振って、2人は部屋を出て行った。