桜の約束
朝目が覚めて、昨日のことが嘘だったんじゃないかと思った。
昨日、野上くんと話したことは本当に嬉しかった。
夢かとさえ思う。
携帯をみたら、1番新しい履歴に野上くんの名前があって、ホッとした。
少しだけ開けた窓から、穏やかな風が入ってきてカーテンが揺れた。
いつも通りなのに、いつもよりも気持ちのいい朝。
服を着替えて、朝食をとった。
いつもなら、休日はこの後本を読んだりして過ごす。
時折訪れる十夜と亜美が休日の違いなのに、今日は違う。
もしかしたら、野上くんに会えるかもしれない。
そう思って、私は家を飛び出した。
お母さんは相変わらず心配そうだったけど、すぐに帰ってくる、って言ったら安心したように笑った。
桜まで駆けた。
少しでも早く。
桜の木の下に行きたかった。