桜の約束
「ねぇ、怒ったの?十夜」
先に歩く、十夜の後ろ姿が怖い。
慌てて追いかけて、十夜の横に並ぶようにして話しかける。
「いや、怒ってないよ」
「ふ…ん…?」
へにょっと笑う十夜。
いやいや、あんた怒ってるでしょ。
いつもよりも笑顔が歪。
まぁ、何も言わないけど。
「ねぇ、十夜」
「今度は何?亜美」
「桜…記憶戻るのかなぁ」
「…戻ればいいねぇ。でも、オレにはわからないよ。
それに、桜が幸せなら何でもいいよ」
ふと出た疑問に、十夜は遠くを見つめながら、あまり関心がなさそうに答える。
桜が幸せなら、って。
ほんと、ぶれないね。
「十夜らしいよ」
「そう?」
意外そうにこっちを向く。
「うん」
「亜美は、桜に記憶を取り戻して欲しいの?」