桜の約束
いきなりあたしに聞いてくるとは。
不意打ち?
そんなのいつの間に習得した。
「おーい、亜美」
「だから、聞こえてるってば。
えぇー?あたしが桜に思い出して欲しいか?
強いて言うなら、思い出して欲しい、かな。
___あ!」
考えながら答えているあたしの視界に、桜の木と、人…守の姿が映った。
「ん?あぁ、守ね」
あたしが声を出したことに反応して、あたしと同じ方を見て納得している。
「声、掛けて行こうか」
「うん。今日は何時からいたのかな?
何時までいるつもりなのかな」
「守に聞いたら?」
「…うん、そーする」
少し歩くスピードを速くして、あたしは守に近づいて行く。
守はあたしに気づかず、視線を手元の文庫本に落としてる。
太陽の登ってる側に立って、あたしは守の手元に影を作った。
影に気づいた守が、顔を上げた。
あたしの影から漏れた太陽の光が眩しいのか、眉間にしわ。