桜の約束
とにかく、あたしと同じ考えだったから、同意しておく。
「だね。あたしも、そう思う」
あたしが告げると、桜は項垂れた。
「思い出せって言うけど…私だって思い出したいけど…思い出せないんだもの」
綺麗に整った顔が伏せられ、下を向いた桜が言葉を紡いで行く。
「それに、思い出す必要がない」
……なにも言えない。
あたしは、記憶をなくしたことなんてないからわかんない。
記憶に、いらないとこなんてないんじゃないの、って思う。
でも違うのかな。
本人がいらないとさえ思えば、いらない記憶はできてしまうのかな。
「私…中学入学から、2年生の秋までの約2年間の記憶…消えたんなら、必要じゃ無いものだと思うの」
あたしには、必要だよ。
そういえば、それは必要な記憶に変わるのだろうか。