桜の約束




「思い出したい…と本当に思ってるかわからない」



桜は、記憶を知らないからそんなことが言えるんだよ。



そう言いたかった。


でも、ならあたしは?


記憶を失ったことがないから、そんなことが桜に言えるんじゃないの?


そう考えたら、なにも言えなくなった。



本当に、思い出したいと思えないなら、思い出すことに価値はないのかもしれないし、むしろそれは桜にとっての負担かもしれない。



あたしが迷ってる間に、十夜が一歩桜に近づいた。




「思い出したい、って思わないなら思い出さなくてもいいかもしれない。けどねぇ、桜。
桜が思い出してくれることを、ずっとずっと待ってる人もいるんだよ」



それは…あたし。


それは…十夜。



それは…守。



あたしは、十夜の言葉に当てはまる人物が沢山思い浮かぶ。



もちろん、桜の両親だって望んでるんじゃないだろうか。



「…それは…誰?
十夜?亜美?」



桜の回答は予想に反して本当に身近人だけだった。



< 95 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop