桜の約束
「思い出したい…と本当に思ってるかわからない」
桜は、記憶を知らないからそんなことが言えるんだよ。
そう言いたかった。
でも、ならあたしは?
記憶を失ったことがないから、そんなことが桜に言えるんじゃないの?
そう考えたら、なにも言えなくなった。
本当に、思い出したいと思えないなら、思い出すことに価値はないのかもしれないし、むしろそれは桜にとっての負担かもしれない。
あたしが迷ってる間に、十夜が一歩桜に近づいた。
「思い出したい、って思わないなら思い出さなくてもいいかもしれない。けどねぇ、桜。
桜が思い出してくれることを、ずっとずっと待ってる人もいるんだよ」
それは…あたし。
それは…十夜。
それは…守。
あたしは、十夜の言葉に当てはまる人物が沢山思い浮かぶ。
もちろん、桜の両親だって望んでるんじゃないだろうか。
「…それは…誰?
十夜?亜美?」
桜の回答は予想に反して本当に身近人だけだった。