体育館12:25~それぞれのみる景色~

「そうだ、恭也くん。あの、電車で庇ってくれて、ありがとね……?」


 さっきまでのテンションはどこへやら。


 くるりと振り返ってしおらしくそう言った彼女は頬を染めて、俺を見つめながらお礼を言った。


 かと思ったらまた海の方に向き直って、口元に弧を描かせて、海の写真を撮り始めた。


 短くなった髪、表情を隠しきれていない。


 髪で表情を隠すのが癖の彼女。


 それは少し前から知っていた。


 俺がそのことを知っているのに気付いているからなのか、俺の視線から逃れようと、ちょこまかと動き回る。


 赤い顔が見え隠れして、何とも言えない気持ちになる。


 彼女の行動が照れ隠しだとわかるから、余計にムズムズした。


 
< 109 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop