体育館12:25~それぞれのみる景色~
「そうだ、恭也くん。あの、電車で庇ってくれて、ありがとね……?」
さっきまでのテンションはどこへやら。
くるりと振り返ってしおらしくそう言った彼女は頬を染めて、俺を見つめながらお礼を言った。
かと思ったらまた海の方に向き直って、口元に弧を描かせて、海の写真を撮り始めた。
短くなった髪、表情を隠しきれていない。
髪で表情を隠すのが癖の彼女。
それは少し前から知っていた。
俺がそのことを知っているのに気付いているからなのか、俺の視線から逃れようと、ちょこまかと動き回る。
赤い顔が見え隠れして、何とも言えない気持ちになる。
彼女の行動が照れ隠しだとわかるから、余計にムズムズした。