体育館12:25~それぞれのみる景色~
佐伯が入学したときに俺もこの高校に赴任してきて、最初に会った頃から卒業するまでの3年間、ずっとこいつを見守り続けてきた。
教師だから知っている、こいつの家族構成。
そこからは、何か暗いものを抱えているのは容易に想像できて。
だからこんなにも頑なに、感情を閉ざしているのかと思った。
それが、俺がこいつを観察し続けた理由だ。
1年経ってもやっぱり感情は読めなくて、相変わらずわかるのはシュートが決まった瞬間の喜びだけ。
部活以外、学校での佐伯はやっぱり感情は表に出さないが、男子とはよく話す。
女子のことは避けているみたいだった。
その詳しい理由は、俺は知らない。
……だけど、いつの頃からだっただろう。
少しだけ、佐伯が変わり始めたのは。
よく見ていた俺にだけわかる、些細な変化だった。
佐伯が2年になり、俺もここにきてから2年目となった時、1年生のクラスの担任を任されることとなった。
初めての担任で緊張はしたが、まあいい経験だ。
で、俺はすぐに知った。
入学したばかりのその1年生の中に、教師の中でも話題になるほど目立つ4人がいるということを。