体育館12:25~それぞれのみる景色~

 人と人の間をすり抜けるように、彼女としっかり手を繋ぎながら、更衣室に向かう。


 コインロッカーもついていて、便利らしい。


 あらかじめ調べておいてよかったなと思う。


 俺に半ば引っ張られるようにして歩く彼女は、砂に足を取られるのか、時々転びそうになっている。


 その度に、左手を握る彼女の小さな手に力が込められるから、正直その可愛さに誘われるように俺は歩く速度を速めたりしてる。


 あれ、俺ってこんな性格だったっけ。


 なんだか好きな子に意地悪をする小学生みたいだ。


 でも、仕方ない。


 可愛い彼女が悪い。


 だけど、やりすぎると嫌われるかも。


 気の遣えない男だって思われるかも。


 そう思ったりもするわけで。


 彼女の様子をちらちらとうかがいながら、歩くスピードを調整する。


 けど、振り向くたびに見えるのは、いつだって楽しそうに笑っている彼女の顔。


 それに安心するけれど、同時に胸に不安も巻き起こる。


 俺以外の男がいる場所で、そんなに可愛く笑わないで、なんて。


 独占欲の塊、不安の塊。


 バカみたいだけど、そんなふうに思うんだ。


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