体育館12:25~それぞれのみる景色~

 そんなことをぼんやりと考えて、どれくらい時間が経ったんだろう。


 たぶんそんなに経っていないはずだけど、もしかしたら彼女はもう外で待っているかもしれない。


 彼女より早く待っているのが彼氏の務めだと思うし、そうすれば悪いムシがつかないってのもわかりきってた。


 それなのに余計なことを考えてばかりで、シミュレーションしていた行動なんかできやしないし、用意してきた言葉も、ほとんど言えてない。


 またひとつ大きく息を吐き出し、急いで着替えた。


 海パンにパーカーを羽織って、貴重品だけ持って外に出る。


 彼女との待ち合わせ場所である、大きな看板の下。


 そこに目をやると、遠目でもわかる彼女の姿がそこにある。


 ……案の定というか、やっぱりナンパされているみたいだ。


 見た感じチャラそうな2人組の男。


 そいつらが彼女に何やら話しかけているっぽい。


 あー、くそ。


 余計なことなんか考えてないで、さっさと準備を済ませておけばよかった。


 ムカムカするし、イラついてしょうがない。


 でも、待ち合わせの場所に彼女がちゃんと立っていてくれたことに、心底ほっとする。


 どこかに連れ去られたりしてなくて、本当によかった。


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